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思いを語り、アクションを起こしたら次の答えが出た- Takako Kajikawa – 梶川貴子氏

思いを語り、アクションを起こしたら次の答えが出た- Takako Kajikawa – 梶川貴子氏

ファクトリー アート ミュージアム トヤマ 館長
株式会社 フジタ 代表取締役
梶川貴子さん

 

人は思い立ってもなかなか行動できないもの。でも、物事が動くときは周りの助けによって流れができ、自分の力以上のものが働くと、今回のプロジェクトで実感しました。

 

株式会社フジタは、父が昭和36年に創業し、昭和50年に現在の場所に移転・設立した会社です。4年前、設備増強のために本社近くの建屋を購入しましたが、敷地面積がかなり広く、その一部を活用して金属の美しいものを飾るミュージアム「Factory Art Museum TOYAMA(ファクトリーアートミュージアムトヤマ)」を作りました。

きっかけは、平成27年7月に県外で受講した自社製品開発イノベーション講座「zenschool(ゼンスクール)」。経営者の心からやりたいことを見つけ、好きなことと資産を掛け合わせるための4日間×12時間の講座です。私は11期生として、ノープランで参加しました。

講座の中である時フッとやりたいことが見つかりました。それが、金属を使った美しいものづくり、町工場の人が創作したメタルアート作品を展示できるミュージアムを作ることです。

ちょうどその講座を取材していたテレビ番組「ガイアの夜明け」が富山までついてきて、半年という長期間で取材を受けました。最初はできるか不安でしたが、人に喋れば喋るほどどんどん自分と一体化して「これは私にしかできないこと」と腹が決まり、後から「まさか」と思うようなことが現実になってきました。

製造業は小さい会社が後から既存の業界に参入しても、大手の企業や先に着手している企業には勝てません。しかし、他人がやらないことをやってしまえば誰も真似しない、独壇場です。元々、人と同じことをするのが好きではなく、周りからは「前例がない」とか「収益性がない」と言われましたが、「だからこそ、今から作るんだ」と諦めないでやり続けたことで結果が出ました。1年後、周りの人もようやく気がついて理解し、フォロワーになってくれるという現象を経験しました。

強気な発言は現実化します。これはやっていない人にはわかりません。やりもしないでダメだと言っている時間がもったいないので、やってダメなら次の手を考えればいい。また、困った顔をしながらやっても楽しくないので、楽しい顔をしながら進めていきました。イライラすること自体が無駄なことなので、スルーまたは解決するために考えること、誰かに助けを求めることがベストです。人に頼んでやってもらったら、その何倍も返してあげればいいと思います。

 

いろんな人の応援や協力があって、最初の作品である社員制作のメタルアートの欄間が完成。クラウドファンディング、ミュージアムの改装工事、作品の収集など進んでいきました。大きな反対もなく、結果的にはすべてうまくいくようになっていました。代表が率先してやれば、社員、サポーターもついてきてくれるのです。

オープンは、平成29年4月8日。構想から2年弱のことでした。

「ファクトリーアートミュージアムトヤマ」には、自社作品4点を含め、県外の法人や個人が廃材を利用して趣味で作った作品、町工場とデザイナーとのコラボ作品など、計30点を展示しています。男性の秘めた夢を形にした作品が多く、特に製造業の方が大きな刺激を受けて帰られます。ミュージアムができたことで、職人気質で寡黙だった社員が、担当のお客様が来られたら自身で案内し、説明するようになるなど、社内でも良い循環を生み出しています。ミュージアムを訪れた方との取引が始まるなど、予想外のことも起き、情報や人の紹介など、お声がけも増えました。

これらは、インターネットのある今の時代じゃなかったら成り立たなかったと思います。クラウドファンディングでお金だけでなく、応援してくれるサポーターを募り、ネットで作品募集もできたのが大きかったです。

 

ミュージアムには、興味のない人が100人来るよりも、興味のある人が1人でも遠くから来てくれる方がずっと嬉しいですね。ここから、ミュージアムを目的に日本を訪れる外国人、特にヨーロッパの人や、ここで働きたいという新しい社員が来てくれることを願っています。

 
▼梶川貴子氏 関連リンク

Factory Art Museum TOYAMA(ファクトリーアートミュージアムトヤマ)ホームページ
Factory Art Museum TOYAMA(ファクトリーアートミュージアムトヤマ)Facebook
(株)フジタホームページ
(株)フジタFacebook

 

~取材を終えて~

ミュージアムには、消火器の取っ手やホースを利用し「ターミネーター」に出てきそうな生物や、美しい桜を模したものなど様々な作品があり、とても面白かったです。「自分ではすごいことをしたと思っていない。思いを語り、アクションを起こしたら次の答えが出た」と話す梶川さんの力強さに、惹きつけられました。

なお、ミュージアムの2階はセミナーのできるイベントスペース。「えんとつ町のプペル 光る絵本展」や、夏休みにものづくりワークショップなども開催されたそうです。今後もどんな面白いものが生まれるのか、楽しみですね。

 
ライター VoiceFull 古野知晴