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農業の未来をITで変える。-Katsunori Shimomura - 下村豪徳氏

農業の未来をITで変える。-Katsunori Shimomura - 下村豪徳氏

株式会社 笑農和 代表
下村豪徳(しもむらかつのり)さん

▼プロフィール
立山町出身、滑川市在住。システムエンジニアの知識と経験を活かし、スマート農業を農業法人に推進するコンサルタント業務などを行う。ごはんソムリエの資格を持つ。平成27年から水管理のできるスマート水田サービスを自社で始め、平成29年5月の実用化を目指す。

 

富山県は95%が米農家。彼らが最も時間を費やす作業は、シーズンを通して1反(10アール)当たり12時間かかる水管理です。そこで、インターネットを介してスマホやパソコンで自宅にいながら水管理ができるシステム「paditch(パディッチ)」を開発しました。深夜や早朝にタイマーを設定し、水田には欠かせない水門開閉を自動で行う水位調整サービスです。水門に木の枝葉が詰まるなどのトラブルがあった場合や逆流、水漏れの際には、アラート通知で状態がいち早く分かります。水位や水温などのデータとセンサーを活用することで、食味や品質の向上に役立て、安定した品質の高い米を作ることができるようになるのです。

 

近年、米の価格下落により、小さい田んぼは作っても労力のみがかかり、売り上げにつながらない状況となってきました。立山町にある私の実家も例外ではなく、15年間システムエンジニアとして働いてきたエンジニアの観点から、ITで農業を変革することを思い立ったんです。製造業の工場効率のアップや工程管理、調達管理などに携わってきたことで、インターネットを用いたシステムを組むことは得意でした。
実家はもちろん、農業全体を活性化した方が盛り上がると考え、平成25年2月、笑農和を立ち上げました。「会社組織として大きくする」というなりたい姿が明確だったので、最初から法人を選択したんです。

実家で栽培された無農薬米(白米・玄米)をはじめ、都会の人がペットボトルの水で米を炊くことから、立山の風土そのものを食べてもらうために米と水のセットなども作り、インターネットで販売しています。

「チャレンジし続ける起業家である」が人生理念で、「IT農業を通じて笑顔の人の和を作り社会に貢献する」を経営理念としています。農家さんだけでなく、関連する人全てに対して、ITを使った次世代の新しい農業を提案していきたいと考えています。

ちょうど、国がIot(Internet of Thing。モノがセンサーでネットに繋がり通信する仕組み)を推し進めていることもあり、IT企業がインターネットに繋げてモノを作る流れができてきています。図面さえ描けば3Dプリンターで試作できる時代。産業構造を変えるような初めてのハードウェア開発は大変ですが、完成した時の楽しさはほかに代えがたいものがあります。
モノを作り出すには、0から1を作る力、考える力が大切です。そして行動するかしないか。アイデアややりたいことがあっても、自分が中心になってやるかどうかによって異なります。

 

2017年から70歳以上の農業従事者が65%を超え、農業をやめてしまうことが農業センサス(農林水産省が5年ごとに実施する農業に関する全般的な調査)より分かっています。これにより、農業従事者は35%まで減ることが予想され、地域を数人の担い手で支える時代に入ります。それには人だけでは無理で、ロボットかITを使わなければ実現できません。
今後はスマート水田化を実現し、経験のない新規就農者でも安定した品質の高い米を作れるようにしていきたいと考えています。現在、試作が終わり、今年の5月から富山県全域での実用化を目指しています。導入される農家さんを募集しています。
また、東南アジア全般に向け、土地の状態や水不足の状況などを測って最低限の水量を確保し、適切な作業で質を上げられるような仕組み作りなども視野に入れています。「農業の未来はITで変わる」そう信じています。

 

▼下村豪徳氏 関連リンク
(株)笑農和公式サイト http://enowa.jp/
(株)笑農和Facebookページ https://www.facebook.com/enowa.jp/

 

 

~取材を終えて~

私の実家でも、祖母が高齢化により田んぼをやめると言っていました。下村さんのスマート水田サービス「paditch(パディッチ)」は、そんな諦めようとしている人々の希望になるのではと思います。導入は、本体価格11万円と通信代、それに初期設定費でできるそうです。ITで農業を変革していく下村さんの活躍を、今後も楽しみにしています。
ライター:VoiceFull 古野知晴