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横にいて寄り添うことの方が、解決することよりも意味がある。 -Jun Miyata- 宮田 隼 氏

横にいて寄り添うことの方が、解決することよりも意味がある。  -Jun Miyata- 宮田 隼 氏

寺子屋みやた代表・コミュニティハウスひとのま共同代表
宮田 隼(みやた じゅん)さん。

▼プロフィール
昭和58年生まれ、福岡県出身。日本福祉大学卒業後、大手学習塾に勤め、その後奥さんの出身地である富山県へ。不登校の子の居場所作りからホームレスの人の生活支援まで幅広い相談を受け入れている。

 

「コミュニティハウスひとのま」は、平成23年に元島生くんと一緒に始めました。一軒家を借り、誰でも好きな時に来られる場です。平日でも、保育園児から年配の方まで平均20~30人が集まります。県内各地から、遠いところでは石川県の小松市や七尾市からも来ています。午前中は子どもが多く、午後になると大人の割合が増えますが、日によって年齢や男女比も全く異なります。基本的にプログラムは一切用意せず、ゲームや音楽など、それぞれ思い思いに過ごします。やりたい人が持って来たことをするし、みんなが同じことをしなくてもいい。ガレージの2階で昼寝している人もいます。ここで出会い、仲良くなった子も多いです。お昼も弁当を持参、買ってくる人、台所で作る人など、自由。とことん「サービス業」にはしたくないんです。

 

「寺子屋みやた」はいわゆる学習塾としてひとのまより1年早く始めましたが、やっているうちに不登校の相談も多く寄せられるようになりました。不登校の子も「おいでおいで」とやっているうちに「そういった話も聞いてくれるらしい」と噂が広まり、気が付けば20代や30代のひきこもりの相談も寄せられるようになりました。中には、息子がひきこもっている上に暴力を振るっているというものもあり、そこから関わり始めて息子さんと話せるようになり、話していくうちに「あれ? 親の関わりもあんまり良くないなあ」と気付くこともあったり、さらによくよく母親の話を聞いていくと夫からのDVも隠れていたりといろいろ見えてきます。そうするとDV相談窓口や市役所の生活保護課や社会福祉課とも連携して支援するようになりました。夜中にDVで家を飛び出した人が泊まりに来たり、市役所からの紹介でホームレスの人が生活支援を受けるまでの宿泊場所としたり…。その人たちが当面の生活ができるよう、フードバンクの方や利用者さん達から余っている食料を分けてもらうなど、やっていることがどんどん広がっていきました。

 
小さなものから大きなものまで、何も拒みません。だからいろんな人やものがやってくるんです。不登校や仕事の無い人の相談、スクールカウンセラーの人から電話がかかってくるなど、毎日起こることも来る相談も違います。先日、岩手から訪れたある大学の先生が、ひとのまを観察して、その1日の活動をまとめてくれました。①不登校児・生徒の居場所・ケア、②若年無業者の居場所・ケア、③子育て・教育相談、④生活困窮者への食料支援、⑤生活困窮者の一時保護(宿泊)、⑥保護者(母親)の集う場…、いろいろありますが、それはたまたまその日の出来事です。本当に毎日行われることは変わります。そういうのを人の縁をたぐり寄せてやっている感じです。「BOOK GIFT」を始め、基本的にここの備品でお金をかけたものは1つもなく、全部もらいものです。

 
やり始めたきっかけや理由も1つじゃありません。僕自身も居場所が欲しかったこと、塾の先生をやっていて不登校の子がいっぱいいたこと、元島くんという一緒にやれる人がいたこと…。「社会や世の中がこうだから」とか熱意があるわけじゃなく、目の前で必要なことに身を委ねていたらこうなった。たまたま会ったのが困っている人で、「僕にできることだったら手伝うよ」とやっていたら単純に友達が増えていったんです。でも、僕は「解決してやる」というのはこれっぽっちもなく、ただ横にいるだけ。例えば不登校が切り口になって家庭内暴力とかいろんな問題に気付くのですが、不登校が解決すれば全て終わりではないんです。横にいて寄り添うことの方が、解決することよりも意味があると思っています。ここでいろんなことが起こり、他の人よりも見ているものが多いため、その話を聞かせてほしいと言われて講演活動を行うこともあります。

 

僕が接した中で、「人と関わりたくない」と口では言っても、本当にそう思っている人はいなかった。「傷つくぐらいなら会いたくない」という感じの人や、そもそも人に対して期待しすぎの人、いじめられた経験から人が怖い人、「死にたい」とわざわざ僕に電話をかけてくる人とか、どこかしらで人と関わっていたいんだと気付かされる。

 
最近、泊めた人にノートパソコンとお金を盗まれたんです。けど、それをきっかけに「その人はなぜそういう行動に至ったんだろう」とかその人の思いを考えることができる。それ自体より、周りから「そんな人がいるから厳重に管理しないと」と言われる方が困るんです。「そんな人」って色眼鏡で見ている限り、社会に受け入れられていないと思わせてしまう。みんながもうちょっと寛容になれば、同じことを繰り返さなくていいんだろうなと思っちゃいます。もしいつかその人と再会したら、笑って「どうした?」と聞ける自分でありたいと思っています。

 
「これからこんなことをしたい」とかはありません。ゴールを決めるのは苦手なんです。形を変えるために舵を切るのは僕じゃなくていい。他の誰かの声が大きくなっていったら、変わる時なんだと思います。僕は何でもいいんで(笑)。

 

 

▼宮田 隼氏 関連リンク

参照:『「ダイバーシティとやま」な日々

コミュニティハウスひとのま

 

 

 

~取材を終えて~

気負わずとても自然体で、どんな人も受容する宮田さん。特に印象的だったのは、宮田さんへのインタビューだったはずなのに、いつの間にかそこに集う人達を会話に巻き込み、ごく自然な形で溶け込ませてくれたこと。人と人とを自然に繋げられるのが、宮田さんの魅力の一つなのだと思いました。
 

ライター: VoiceFull 古野知晴