学生団体 夢たまご 代表
伊藤大樹(いとう たいき)さん
▼プロフィール
平成9年、福井県生まれの18歳。親の転勤で中学校までを石川県や愛知県で過ごす。高校進学を機に親元を離れて勉強しようと、富山高等専門学校へ入学した。3年生のときに友人と学生団体「夢たまご」を設立し、4年生の現在も代表を務めている。
高専(富山高等専門学校)は、テストや資格試験など座っての勉強がメインで、基本的には公務員や学者を生み出すことが多い学校だと思います。僕はもっといろんな機会に積極的に参加して、他の考え方を学んでみたいという思いで、2年生のときからビジネスコンテストやスピーチコンテストに出場してきました。社会人の実体験から出る話を聞いて、学生が学校教育だけでは感じ取れないことを体感して、自分の糧にしたり、将来の夢へのきっかけにできればと、平成27年12月、同級生3人と「夢たまご」を設立しました。僕が設立当初から大事にしているのは、とにかく「学生に夢を持ってほしい」ということです。「夢そのものを作ることは本人にしかできないけど、その第一歩となる場所はたとえ第三者であっても作れる。僕たちは、その学生の夢の“きっかけ”となるような場所や機会をみんなで作ろう」という思いで「夢たまご」と名付けました。今では、高専の1年から4年までの学生20人が所属しています。
学生が「夢たまご」という団体の中でほかの学生やいろんな社会人の方と交流することで、キャンプファイヤーの火のように、エネルギーは人から人へ伝わります。僕はいまの学生は自分のやりたいことがわからず、何か興味のあることがあっても、それを夢だと自信を持って言えない学生が多いと思っています。だから夢たまごでは、学校教育では味わえないような、自分たちの活動が社会の誰かのためになっているという“小さな成功体験”や自分のせいで他人に迷惑をかけてしまうような“失敗”を積み重ね、座学では感じ取れない、自らの思いが生む行動が価値になるということ、そして失敗することから自分の未熟さというものを学んでほしいと考えています。僕はそうしているうちに、本当の自分だけの夢が学生に芽生えてくると信じているのです。初めはゲームでも何でもいいので、誰の意見にも流されずに、自分だけの思いや意識を持って「自発的にする」ことが大事で、その何かに打ち込んだ経験がきっとその後に活きてくるんだと思います。
子どもの物心がつく頃になると、大人は決まってたくさん夢のある子どもたちに、「いくつも夢を叶えるのは無理だから1つに絞りなさい」と言います。でも、その人がいくつになっても、どんな環境にいようと、夢はいくつあってもいいと思うんです。僕は高校1年の時に同級生と結成した「Hint’s(ヒンツ)」というバンドではボーカルを担当し、3~4か月に一度、ライブも行っています。卒業後は大学進学も視野に入れていますが、将来は僕自身が何かに悩んでいる人たちに対して話をして、その人たちの力になるような存在になることや、小説家、ボーカリスト、ラーメン屋さん、富山でゲストハウスを運営する…など、夢はいくつもあります。そのためにも、いまは自分の頭の中にある社会の理想像と問題意識を、これからの経験の中でそれが本当に誰かのためになるのかということを考える時間を上手に作りつつ、社会の中で自分の実現したいことを着実に形にしていきたいと考えています。
僕が富山県に来た当初、富山県の人たちは恥ずかしがりやで保守的だというイメージを持っていました。けれど次第に、知っている人に対してはすごく優しく、「人のために何かをする」という文化が強いと感じるようになりました。そのように僕が感じ取れたからこそ、その文化をこれからの若者が受け継いでいくためにもいろんな人と交流できる場を作り、若い人が外に対して、“自分を育ててくれている社会”に対しての意識を持てるようにしていきたいと考えています。
現在、射水市や高岡市、富山市、立山町、滑川市の様々な活動に参加しています。「人の思いを知り、共感し、やっていることを手伝って成功させてあげたい」「何かしてもらったら、自分のできること以上のことでお返しする」という思いで動いていると、自然と次々に出会う人が増えていきました。すべては周りの人のおかげです。いろんな人がこれまでに失敗や挫折に負けず、苦渋の時を乗り越えてきてくれたおかげで、僕はその話から本当に大事にしたいという価値観やものの考え方に出会えました。それは今でも変わらず、毎日自分の価値観や考え方に肉付けされ続けています。
とはいえ、自分の中ではまだ、100%のものを作り上げていません。「これまでの人生で1番いい経験」と思えることは何度もありましたが、自分が何かをやりきったという実感はまだありません。今後は、富山の中で学生団体や一生懸命頑張っている地方の団体を1つの場所で交流できるようにつなげ、まとめることができたらと考えています。そこから新たな富山県の一歩となる“きっかけ”を創り出したいです。
▼伊藤大樹氏 関連リンク
夢たまごのFacebookページ
~取材を終えて~
平日でも、平均3~4件の打ち合わせを行っている伊藤さん。それぞれ事前に話すことを決めておくため、30分程度の報告で済むそうです。活動的で周りから頼りにされる存在である一方、「オンとオフの切り替えは早いほうです」と笑う顔は、18歳の無邪気な素顔でした。これからの可能性にあふれた伊藤さんの活躍に、期待したいですね。
ライター:VoiceFull 古野知晴(ふるのちはる)