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森も人も、同じ思いで育てていく! – Misako Ejiri – 江尻美佐子氏

森も人も、同じ思いで育てていく!  – Misako Ejiri –  江尻美佐子氏

一般社団法人moribio森の暮らし研究所 代表
江尻 美佐子さん

神奈川県生まれ、両親の転勤で岡山県、静岡県育ち。18年前にご主人の実家がある富山県へIターン。前職を辞めて仕事をゼロから始めるのを機に、家族で林業に飛び込んだ方です。

林業をしたくて森林組合に手紙を書いたところ、最初に返事をくれたのが利賀村でした。利賀村には当時「青年山村協力隊」という制度があり、山の手入れを50年間しているおじいちゃん達を師匠に林業を学びました。ほかの弟子達もみんなIターン者です。

林業は自然相手の仕事。マニュアルがなく、その場に合わせるには経験が必要です。高齢の師匠たちが次々と引退する中、伐ると二度と木が生えない場所などの大事な情報が途絶えてしまわないよう勉強会を始めました。

山は木や草、動植物の棲み処であるという生物多様性を持つとともに、水源地でもあります。豊かな水資源を守り、下流の水災害を防ぐ役割を担っています。しかし人が手を入れた森は弱く、手入れし続けないと倒木やがけ崩れなど災害の原因になってしまいます。そのため、育てたい木に日が当たるよう周りを刈り取り、雪おこし(雪で倒れた木に縄をかけてまっすぐに起こすこと)や枝打ち(木の上に登って枝が大きくならないうちに落とすこと)を1本ずつ行うのです。

そんな風に手をかけて80年も育てた木を、パルプや燃料にするのは最後の使い道。形あるものとして残すことや、漢方などに使われる有用な植物を商品化できたらという思いで今、模索しています。その1つが、機能性の高いクロモジのお茶。資源を枯渇させないように、森が再生するスピードに合わせて作るため、大量の商品化はできません。そこで、「森の循環」や化石燃料を使わずに作るといった、特別な背景を付加価値として販売しています。

従来の「建築用材を出荷する林業」ではなく「山を活かせるプロフェッショナルを育てる林業」のため、「一般社団法人moribio森の暮らし研究所」を夫と一緒に立ち上げました。「moribio(モリビオ)」とは、森のビオトープの意味。森と次の担い手を、同じ思いで育てていくとともに、家族を養える安定した収入へと労働環境を整えることを目指しています。

また、エネルギー発散の場のない今の若者や、大勢の人がいる中でストレスが溜まっている若者にこそ、体を使う気持ち良さを伝える環境教育も行いたいと考えています。

今、利賀村は過疎化で人口が600人を切りました。そんな中、地域創生の追い風に乗り、重労働だけど面白い林業をやってみたいという人を望んでいます。美味しい水と自然豊かなところで子どもを育てるのは、自信を持っておすすめできることですよ。

▼江尻美佐子氏関連リンク

一般社団法人moribio森の暮らし研究所公式サイト
一般社団法人moribio森の暮らし研究所Facebook

~取材を終えて~

熱い思いを持ち、森と人を自然な形で育てる江尻さん。インタビューを通して彼女のエネルギーに触れ、森への関心が深まり、山と自然から受ける恩恵に思いを馳せました。

ライター: VoiceFull 古野知晴(ふるのちはる)